201.覚えなくとも読める財表-4
2014年12月22日
第3回 覚えなくとも読める財務諸表 -評価の仕方-
1.財務諸表の評価の仕方
財務諸表の見方は前回のとおりですが、ではその「評価」はどうのように考えれば良いのでしょうか。
それは基本的に『日常の生活感覚』で判断すればよいのです。
■企業・会社といえども、家計と同じ
収入以上の生活をしていれば、いずれ破綻するように、売上以上の経費を使っていれば、いずれ会社も倒産します。
あるいは借金で生活していれば、一時的には遣り繰りはできていてもいずれ返済できなくなり破綻してしまうように、
会社も過大な借金経営を続けていればは、いずれ倒産します。
このように家計と同じ視点で会社の経営状況を判断すれば、まず間違いはありません。
では、具体的に見てみましょう。
(1)手元資金量の判断
『手元資金量』は、「現預金を平均月商と比べてみる」と前回で説明したとおりです。
平均月商とは、家計でいえば『給料』や『1ヶ月の生活費』です。
手元の現金や預金が1ヶ月の給料分しかない、あるいは半月分しかないとすれば、どう感じますか。
1ヶ月分あればまだしも、まだ月末まで1ヶ月もあるのに、半月分しかなければ心許ないですよね。
これが『判断』です。
通常、手元資金である現金や預金は、月商の1ヶ月分以上、できれば3ヶ月分程度あったらと思いませんか?
つまり、平均月商500万円の事業や商売をされているのであれば、手元の現金や預金は常に1000万円から1500万円程度はある
経営を目指さなくてなりません。
これを会計では『手元流動性比率』2ヶ月以上とか、3ヶ月以上と云っているわけです。
(2)支払能力の判断
『支払能力』は、「流動資産を流動負債と比べてみる」と前回で説明しました。
流動資産は、広義のあなたの会社の支払原資でしたね。
流動負債は、近々支払わなくてはならない支払債務でしたね。
したがって、支払わなくてはならない支払債務より、支払原資が少ないようでは心許ないですね。
これが『判断』です。
冷静に考えると、支払債務はまず100%時期が来れば支払わなくてはならない借金です。
しかし支払原資である流動資産には、『在庫』もあれば『売掛金』も入っています。
したがって、間違いなく現預金になるとは言い切れないので、流動資産は流動負債より多い状況でないと、
会社経営としては「安全だ」と言い切れません。
そのように考えれば、流動資産は流動負債より1.5倍ほど多くなくては、安心した経営とは云えません。
つまり、流動負債が1000万円あるのであれば、流動資産は常に1500万円以上はある経営を目指さなくてはなりません。
これを会計では『流動性比率』150%とか、200%と云っているわけです。
(3)資産活用状況の判断
『資産活用状況』は、「資産合計を売上高と比べてみる」と説明しました。
商売、事業は売れないことには始まりません。売るために、会社はいろいろな資産を持っているともいえます。
したがって、3000万円の資産を持って、もっと簡単にいえば3000万円投じて商売しているのに、1000万円しか売れなかったら、どう考えますか? 話になりませんよね、これが『判断』です。
具体的に考えると、あなたが知人から誘われて「3000万円出してくれたなら1000万円売れる商売があるから、3000万円出して
くれないか」といわれたらどう考えますか。
その感覚で、ご自分の商売や事業を振り返ってみてください。
一般的には総資産以上の売上、もっといえば、私たちの商いは小さいので、倍以上の売上をあげないと事業としては成り立たないと考えるべきです。
つまり、総資産が5000万円あるのであれば、1億程度の売上がある経営を目指さなくてはなりません。
これを会計では、『総資産回転率』2回転とか、3回転と云っているわけです。
(4)儲けの判断
『資産活用状況』の説明をしていますと、どこかで「売ることも大事だけれど、事業で大切なのは儲けでしょ?」という声が
聞こえてくるような気がします。そのとおりです。商売、事業の目的は「儲ける」ことにあります。(これ大事な話です!)
その判断は利益と、投資している総資本(金額的には総資産と同額)を比べます。
いま、多くの中小企業は赤字経営だと云われています。
第三者的に見れば、お金まで出して損しているなんておかしな話だと思いませんか?
だったら、たとえ安くとも預金していたほうがいいという話になってきます。
総資本5000万円も投じているのに、儲けが赤字あるいは50万円では、誰もお金を出しませんよね。 これが『判断』です。
しかし、これが多くの会社が陥っている状況なのです。では、その感覚で考えると、どう思いますか?
そうです、総資本に対する利益率は(私たちの商いは小さいので)少なくとも10%、できれば20%の利益を目指さないと、
事業は継続できません。
つまり、総資本5000万円を投じているのであれば、500万円から1000万円程度の利益がある経営を目指さなくてはなりません。
これを会計では、『総資本利益率』10%とか、20%と云っているわけです。
こうしてみると「会計でいろいろなことがわかる」ということがご理解いただけるかと思います。
だから、会計は『後処理』じゃ意味がないのです。かつ経営者の皆さま自身が活かせないと意味がないのです。
そして、会計を読むことはかんたんなのです。